光合成細菌とは?

光合成細菌(PSB)とは、太陽光を光源としてエネルギーを生み出す細菌の総称であり、肥料ではありません。これらの細菌は水田や河川、活性汚泥など、さまざまな環境に生息しており、古くから地球上に存在しているとされています。光合成細菌は、動物性プランクトンが必要とするビタミンB12を多く含んでおり、その独自の特性から農業や観賞魚の飼育に利用されています。また、水質浄化や養殖漁業、家庭のガーデニングや家庭菜園にも役立つため、野菜や植物を育てる方におすすめの微生物です。

光合成細菌の種類

紅色非硫黄細菌

特徴: この細菌は見た目が赤く「紅色」と呼ばれ、「非硫黄」という名称は生存に硫黄成分を必要としないことを示しています。これらの細菌は有機物を利用して成長し、光合成を行う際に水素や有機物を電子供与体として使用します。また、培養も手軽で家庭でも簡単に培養できることから、各種農業や水産業など幅広い分野で活用されています。※当サイトは主にこちらの菌についての記載になります。

紅色硫黄細菌

特徴: 見た目は紅色非硫黄細菌と同じく赤色ですが、こちらは生存に硫黄成分が必須です。そのため、「硫黄」という名称が付けられています。これらの細菌は硫化水素などの硫黄化合物を電子供与体として利用し、光合成を行います。

緑色硫黄細菌

特徴: 紅色細菌とは異なり、見た目が緑色です。生存には硫黄成分が必須であるため、「硫黄」という名称が付けられています。これらの細菌は硫化水素を電子供与体として利用し、非常に効率的に光合成を行うことができます。

光合成細菌にはどのようなメリットがあるのか?

畜産の餌に混ぜて品質を高める

光合成細菌を畜産の餌に添加することで、家畜の健康と生産性をサポートすることが期待されます。ビタミン、ミネラル、アミノ酸などを多く含むため、栄養バランスの向上に役立ち、家畜の健全な成長を助けます。

連作障害の防止

光合成細菌は、土壌中の有機物を分解し、土壌環境を整える微生物として機能します。この特性により、連作による土壌の悪化を抑え、同じ場所での栽培をサポートします。光合成細菌が微生物のバランスを整え、土壌環境を改善することで、連作障害を防ぐ助けになります。

魚介の養殖に使える

光合成細菌は、養殖環境において水質を改善し、魚介類の成長環境を整える役割を果たします。養殖飼料に添加することで、魚介類の健全な成長をサポートし、さらに色鮮やかな外観を引き出す効果も期待されます。

悪臭の除去に使える

光合成細菌は、悪臭成分を分解する能力を持ち、畜産場や下水処理場での臭気管理に役立ちます。また、堆肥作りの過程で光合成細菌を活用することで、悪臭を抑えつつ効率的に堆肥を作ることができ、良質な堆肥作りを支援します。

堆肥づくりに使用できる

光合成細菌を活用した堆肥作りでは、有機物の分解を促進し、土壌環境を整えます。堆肥に光合成細菌を加えることで、微生物が活性化し、悪臭を抑えながら堆肥作りを進めることができ、土壌の健康に寄与する堆肥を作り出せます。

光合成細菌の活用例

農業分野での利用

光合成細菌は農業分野での利用が広がっています。例えば、野菜や植物に光合成細菌を散布すると、光合成による酸素供給が根の呼吸を活発にし、土壌中の微生物活性を高めることで、間接的に植物の健全な成長をサポートし、病害虫の抑制効果も期待されています。これにより、農薬の使用を減らし、より持続可能な農業が実現できます​ 。

水処理への応用

光合成細菌は水処理にも応用されています。下水や有機性排水に投入すると、有機物を分解して無機化する働きがあり、水質浄化に役立ちます。光合成細菌を使用することで、高度処理が必要な窒素やリンの除去に効果が期待され、悪臭の軽減にも寄与します。これにより、環境負荷の少ない水処理システムの構築が可能となり、持続可能な社会の実現に貢献します​。

バイオ燃料生産

光合成細菌はバイオ燃料の原料としても利用されています。光合成細菌から得られる脂質は、バイオディーゼル燃料の原料として使用できます。光合成細菌は炭酸ガスを効率的に固定化し、脂質の含有量も高いことから、持続可能なバイオ燃料生産に適した素材として期待されています。この技術は再生可能エネルギーの供給源として重要な役割を果たします​ ​。

光合成細菌の匂いについて

光合成細菌には下水のような特有の匂いがあり、光合成細菌が濃くなると比例して匂いが強くなります。これにはいくつかの理由があります。まず、光合成細菌が活発に活動すると、有機物を分解し、その過程で揮発性の化合物を生成することがあります。これらの化合物が匂いの原因となります。また、培養液中の栄養素が消費されると、細菌が代謝によって生成する副産物も匂いを発することがあります。さらに、光合成細菌自体が特有の匂いを持っており、その匂いが培養が進むにつれて強く感じられることがあります。UVライトを使用して培養すると他の有害微生物や雑菌を抑制し、匂いの発生をある程度抑える効果が期待できますが、光合成細菌の成長を抑制し培養効率を低下させる可能性もありますので、ご注意ください。

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培養時や保管時に空気を抜いた方が良い理由

紅色非硫黄細菌は通性嫌気性菌です。通性嫌気性菌は酸素のある環境でもない環境でも生存することができます。しかし、一般的に光合成細菌の培養時や保管時には空気を抜くことを推奨しています。なぜ空気(酸素)を抜くことを推奨しているかというと、酸素のある環境では別の好気性菌が急速に増殖するため、培養環境に酸素が残っている場合、これらの菌が優勢になる可能性があり、他の菌が増えることによって、以下のような影響が考えられます。

競合:紅色非硫黄細菌と他の菌が同じ栄養源を奪い合うため、紅色非硫黄細菌の増殖が抑えられる可能性があります。

代謝産物の影響:他の菌が生成する代謝産物が紅色非硫黄細菌にとって有害である場合、その影響を受けることがあります。

培養条件の変化:他の菌が増えることで、培養液のpHや酸素濃度、栄養バランスなどが変化し、紅色非硫黄細菌にとって最適な環境が損なわれる可能性があります。

以上のことから、培養環境をできるだけ無酸素に保つことが、紅色非硫黄細菌の純粋な増殖を促進するために重要となります。
※培養完成後はキャップをしっかり締めれば、内部に多少の空気があっても殆ど影響はありません。

光合成細菌のPHについて

光合成細菌を培養した活性液は、pH 8程度の弱アルカリ性です。活性液がアルカリ性になるのは培養過程に理由があります。

1. 代謝活動によるアルカリ性物質の生成

光合成細菌は有機物を分解し、エネルギーを得る過程でいくつかの代謝産物を生成します。この中には、アルカリ性の物質も含まれています。特に以下の要因が影響します。

アンモニアの生成:光合成細菌は、有機窒素化合物を分解する過程でアンモニアを生成します。アンモニアは弱アルカリ性であり、培養液中に溶けるとpHが上昇します。

有機酸の利用:光合成細菌は有機酸を消費することができます。有機酸は酸性であるため、それが消費されると相対的に培養液のpHが上がる傾向があります。

2. 二酸化炭素の取り込みと炭酸塩生成

光合成細菌は光合成を行う際に、二酸化炭素(CO2)を取り込みます。これが水中で炭酸塩(HCO3^- や CO3^2-)として存在する場合があります。

炭酸塩の生成:二酸化炭素が取り込まれると、水中で炭酸塩として変化します。炭酸塩はアルカリ性の特性を持っており、培養液のpHを上昇させる要因となります。

3. 培養条件の影響

培養条件もpHの変化に影響を与えます。培養液の組成、温度、光の強度などの条件が、光合成細菌の代謝活動に影響を与え、結果としてpHの変化を引き起こします。

栄養素のバランス:培養液中の栄養素のバランスが、光合成細菌の成長と代謝に影響し、生成される代謝産物の種類と量を変えることがあります。

酸素供給:光合成細菌の多くは好気性であり、酸素の供給も代謝に影響します。酸素の供給が適切でない場合、異なる代謝経路が活性化され、異なる代謝産物が生成されることがあります。

これらの要因が組み合わさり、光合成細菌を培養する過程でpH 8前後のアルカリ性環境が形成されることが多くなります。

他の有用微生物と一緒に培養・保管できるか?

乳酸菌、酵母菌、納豆菌など、これらの菌は同時に使用すると、光合成細菌がよりよく働く環境を作ってくれます。しかし、これに光合成細菌を加えて培養することは非常に難しく、効率の悪いものとなります。その原因として考えられる要素は以下の通りです。

1. pHの違い:

- 各菌種は異なるpH環境を好みます。例えば、乳酸菌は酸性環境を好みますが、光合成細菌は中性からアルカリ性の環境を好む傾向があります。

2. 光の条件の違い:

- 光合成細菌は光を必要とするため、培養液を適切に照らすことが重要です。乳酸菌や酵母菌は光を必要としないため、光の条件が異なることを考慮する必要があります。

3. 栄養素の違い:

- 乳酸菌や酵母菌、納豆菌が必要とする栄養素と、光合成細菌が必要とする栄養素が異なるため、培養液の成分を調整することが必要です。例えば、乳酸菌、酵母菌、納豆菌は糖質を必要としますが、光合成細菌には必要ありません。光合成細菌には特定の有機酸やミネラルが必要です。

4. クロスコンタミネーション:

- 異なる菌種を同じ培養環境で増やすと、クロスコンタミネーションのリスクが高まります。一部の菌種が他の菌種の増殖を抑制する可能性があります。

以上の理由から、他の有用微生物資材と、光合成細菌は、培養環境や保管環境を分けることを推奨します。

光合成細菌の安全性

光合成細菌は、野菜・植物の育成にも役立つといったメリットも大きい細菌です。しかし、使用するにあたり安全性について不安を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。以下では、光合成細菌の安全性について解説いたします。

細菌の安全性はバイオセーフティーレベル(BSL)によって分類されている

細菌は、良いものもあれば、悪いものもあります。その良否を判断する指標となるのが、バイオセーフティーレベル(BSL)です。バイオセーフティーレベル(BSL)は、WHOが定義しているリスク分類を参考に、各国の担当機関が定めています。

リスク分類には、リスク群1~リスク群4があり、安全性が高い微生物ほど数字が小さくなります。エボラ出血熱のような危険性が高いものは、リスク群4に分類されますが、人に無害な微生物はリスク群1に分類されるため安全と判断できるでしょう。

光合成細菌は安全性の高い細菌

光合成細菌の中で「ロドバクター」と呼ばれる細菌は、リスク群1に分類されています。世の中に様々な種類がある細菌のなかでも、光合成細菌は安全性が高く認められているため、食品や農業分野でも幅広く活用されています。

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